国民国家 構築と正統化――政治的なものの歴史社会学のために
原題:Sociologie historique du politique (Paris, La Decouverte, 2007(1997))
イヴ・デロワ 著
中野裕二 監訳/小山晶子・稲永祐介 訳
ISBN:978-4-905497-11-0、 四六判並製、209頁、本体価格2,200円、2013年刊
歴史学と社会学の断絶から交差へと至る過程を理論的に跡づけ、近代国家形成、国民構築、投票の意味変化について分析。フランスにおける政治社会学の理論的展開を理解するのに最適の1冊
「本書の中でヨーロッパ史,とりわけフランス史を介して描かれるこの歴史社会学的な過程は、明治時代の近代化政策に伴い日本が西洋の影響に扉を開いた後の日本近代史の中にも見いだされる。 ヨーロッパも日本も経済発展の観点と同じく、軍事的安全保障、環境面での安全という観点においても、共通する課題に同時期に直面するはずである」
(「日本語版への序文」より)
【著者】イヴ・デロワ Yves Déloye
1963年生まれ。1991年に政治学博士(パリ第一大学)を取得して以来,ストラスブール政治学院,パリ第一大学の教授を歴任し,現在,ボルドー政治学院教授。
本書のほか,いずれも邦訳未完であるが,École et citoyenneté. L’individualisme républicain de Jules Ferry à Vichy : controverses, Paris, Presses de la fondation nationale des sciences politiques, 1994(『学校と市民性:ジュール・フェリーからヴィシー政権までの共和的個人主義――論争』),Les voix de Dieu. Pour une autre histoire du suffrage électoral : Le clergé catholique français et le vote XIXe-XXe siècle, Paris, Fayard, 2006(『神の声:19世紀から20世紀におけるフランス聖職者と投票,もう一つの普通選挙の歴史のために』)があり,さらにオリヴィエ・イル(Olivier Ihl)との共著L’acte de vote, Paris, Presse de Sciences Po, 2008(『投票行動』)がある。
【監訳者・訳者】
中野裕二(なかの・ゆうじ)
九州大学大学院法学研究科博士後期課程修了。博士(法学,1996年)。現在,駒澤大学法学部教授。専門は,政治社会学。
『フランス国家とマイノリティ』(国際書院,1996年),『来るべき〈民主主義〉』(共著,藤原書店,2003年),『移民の社会的統合と排除』(共著,東京大学出版会,2009年)など。
稲永祐介(いねなが・ゆうすけ)
パリ第一大学政治学研究科博士課程修了。博士(政治学,2010年)。現在,フランス国立高等研究院/GSRL-CNRSポスト・ドクター研究員。専門は,国家の比較歴史社会学。
Les modalités de production des morales politiques : Étude comparative des assises des régimes politiques de la IIIe République et de l’Empire japonais (1868-1914)(「政治道徳の生産様式――第三共和制と日本帝国の政治体制の基層(1868-1914)の比較研究」)にて,博士号を取得。
「模範村自治の源流――杉山報徳社の社会的紐帯」(『史境』第50号,歴史人類学会,2005年),「大正期青年団における公徳心の修養――一木喜徳郎の自治構想を中心に」(『近代日本研究』22,慶應義塾福沢研究センター,2005年)など。
小山晶子(おやま・せいこ)
ストラスブール大学政治学博士後期課程修了。博士(政治学、2010年)。現在,東京外国語大学ほか非常勤講師。専門は,政治社会学。
«La Différenciation Culturelle à l’épreuve?: une étude comparée des politiques éducatives destinées aux enfants d’immigrés en Angleterre et en France»(「文化的差異化の敬遠か?――移民系児童に対する教育政策の仏英比較考察」), Journal of Political Science and Sociology, No.11, January 2010, 「移民系子女に対する教育政策のEUレベルにおける新たな展開に対する加盟国の期待についての一考察」(『慶應法学』17号, 2010年), 「移民系児童に対する教育政策の仏英比較――政治社会学的考察の意義」(『国際教育』18号, 2012年)など。
【目 次】
監訳者まえがき(中野裕二)
日本語版への序文
はじめに
序 論
第1章 歴史学の方法と政治的なものの科学
1 歴史学と社会学の間 ― 政治的なものの問題 ―
(1)フランスにおける政治史:創設期の学問領域
(2)歴史的偶然性から社会学的規則性へ
2 新しい知的局面
(1) 歴史学の政治への転換
(2) 現代政治学の歴史への転換
3 政治的なものの歴史社会学の諸原理
(1)政治的なものの長期的な歴史
(2)認識論的争点
(3)政治的なものの歴史社会学の対象
第2章 近代国家の生成過程
1 権力の家産化と脱家産化
(1)近代国家の起源:封建制
(2)「西洋の力学」
2 中央集権化と権力の凝集
(1)「国家の論理」
(2)近代国家の文法
3 国家化と近代的人間の誕生
(1)国家の内奥
(2)近代国家の人類学的読解のために
第3章 ナショナルな市民権とナショナル・アイデンティティ
1 国民とは何か
(1)国民の構築
(2)ナショナルな想像物
2 市民権と世俗化:紛争と軌道
(1)市民権の出現
(2)アメリカの状況:市民権と市民宗教
(3)フランスの状況:市民権とライシテ
3 市民権と国民の同化
(1)市民権と国民国家への忠義
(2) 同国人と外国人
第4章 選挙の文明化の歴史社会学
1 政治化の道筋
(1)歴史学論争
(2)政治化という「砕けた鏡」
2 民主的でかつ分化され、専門化された競争に向けて
(1)選挙の競争形態
(2)選出させること
3 選挙の習俗
(1)選挙の儀礼
(2)投票、暴力の排除
(3)市民的な賢明さ
結 論 過去による迂回
訳者解題1
フランスにおける非宗教的国家と国民の象徴体系(稲永祐介)
訳者解題2
政治的空間の揺れ動く境界(小山晶子)
事項索引
人名索引
【書評・紹介】
《日本図書館協会選定図書≫(第2856回 平成25年4月17日選定)
●『図書新聞』(2013年6月8日)