サッチャーと日産英国工場――誘致交渉の歴史 1973-1986年

鈴木均 著
ISBN:978-4-905497-40-0、四六判上製、230頁、本体価格2,200円、2015年刊

「強い指導者」サッチャーが、日本に見せた顔は・・・
日産、激論の末イギリスへ
欧州研究の新地平!


【著者】鈴木 均(すずき・ひとし)
新潟県立大学国際地域学部国際地域学科 准教授
1974年生まれ。2007年12月 European University Institute歴史文明学科修了(Ph.D., History and Civilization)。専門は、国際関係論、欧州統合論、欧州統合史。

【目次】
はじめに
序章
日産の英国進出/英国進出に対する分析と評価/本書の構成

第一章 日産の海外進出とイギリス
日産自動車の海外進出と欧州市場、英国市場/イギリスのEC加盟と英国自動車産業/英国メーカーの衰退/ヒース政権と日系企業のすれ違い/日産のアイルランド工場計画と、ダットサンUKのロビイング/労働党政権の発足と、日系企業進出の停滞/日産の海外工場建設プロジェクト/自動車総連の発足と、日米・日欧貿易摩擦

第二章 サッチャーと日系企業の出会い
マーガレット・サッチャー、保守党党首に就任/女王陛下の訪日/イギリスにおける潮流の変化と、サッチャー党首の座間工場見学/石原俊の社長就任

第三章 サッチャー政権の発足と決断
サッチャー政権の成立/石原社長の自工会会長就任と、米国からの外圧/日産と英国政府の初接触/記者会見の準備/英国進出計画の発表会見/静かに広がる大陸EC諸国の反発と、イギリス側の反論

第四章 サッチャー政権の日産工場誘致交渉
石原社長の欧州事業/日産によるイギリス現地調査/水をさすSMMT/労組を巻き込んだ工場立地をめぐる綱引き/日産の後退/労使関係が悪化する中の、労組レベルの交渉/財政支援交渉/フォークランド紛争勃発と、対日姿勢の見直し/サッチャー首相の直談判/石原・サッチャー会談/たたみ掛ける英国政府/工場設備のリースに関する交渉/川又提案と、G7ウィリアムズバーグ・サミット/交渉の打開/TUCの提言と、塩路会長の「翻意」/財政支援問題の決着と、日産創業50周年/「最後の障害」の除去/日産と英国政府、合意書を取り交わす/工場用地、北東イングランドのサンダーランドに決定

第五章 日産サンダーランド工場の開業
サンダーランド/工場用地の確保と工場建屋の建設/単一労組協定交渉の決着と、塩路会長の失脚/英国労働運動と自動車産業/サンダーランド工場の人材確保/開所式と、念願の工場フル稼働/英国工場操業にともなう現地の変化と、さらなる日系企業の進出/エピローグ

終  章 

おわりに


【書評・紹介】
●『読売新聞』(2015年12月13日)、評者:牧原出氏・東京大学教授
「……『鉄の女』サッチャー首相は、自由貿易を唱え、経済再建のためにあらゆる抵抗を押し切って、日本の自動車産業の誘致に邁進した。その先駆けが日産自動車のサンダーランド工場建設であり、現在でも実績の高い生産拠点となっている。また日産進出後、多くの企業がイギリスにヨーロッパ拠点を建設するに至る。……(中略)本書は、日英欧の資料を駆使して、この複雑な過程を描ききった好著である。……」

●『大原社会問題研究所雑誌』(2016年11月号)、評者:増田壽男氏・法政大学前総長、名誉教授
「……本書は、日産の英国進出についてその意義について深く考察されており、高く評価することができよう。……」
●『外交』(2016年1月号)