憲政自治と中間団体――一木喜徳郎の道義的共同体論

稲永祐介 著
ISBN:978-4-905497-41-7、四六判上製、384頁、本体価格4,200円、2016年刊

名望家から公民へと社会的行為主体の拡大を試みた内務官僚・一木喜徳郎の思想をつぶさに分析し、日本の近代国家を社会的紐帯による「協働国家」として性格づける画期的論考。


【著者】稲永祐介(いねなが・ゆうすけ)
パリ第一大学政治学研究科博士課程修了。博士(政治学、2010 年)。現在、高等研究学習院(EPHE)/ CNRS-GSRL 学術研究員、大阪市立大学都市文化研究センター研究員。専門は国家の比較歴史社会学。
〔主要業績〕
L’allégeance à l’État moderne. construction de la morale politique en France et au Japon, Paris, L’Harmattan, 2015, « La médiation des idées politiques françaises au Japon : une approche comparative des conceptions de la souveraineté monarchique au XIXe siècle », in Revue Française d’Histoire des Idées Politiques, N°42, 2015,「 第三共和政における二つのフランス:ナショナリストの憎悪をめぐって」(『日仏政治研究』第9 号、日仏政治学会、2015 年)など。翻訳には、イヴ・デロワ『国民国家:構築と正統化―政治的なものの歴史社会学のために』(共訳、中野裕二監訳、吉田書店、2013 年)などがある。

【目次】
序章 課題と方法
第一節 問題の所在
第二節 先行研究の動向とその批判

第一章 共同体秩序の原型――報徳思想の受容
第一節 村落共同体の「醇厚の俗」
1 報徳思想の道徳的秩序
2 共同体の規範意識
第二節 報徳思想の制度化
1 報徳会の活動
2 道徳と進歩の標準

第二章 憲政と自治の関係構造――団体の論理
第一節 立憲君主制における社会的紐帯
1 国家機関としての天皇と議会
2 法規範としての推譲
第二節 自治団体の概念構成  
1 自治構想と団体論
2 納税という公共心の尺度
3 自治団体の関係構造――基本財産造成の課題

第三章 「立憲国民」の育成――主体形成の原理
第一節 地方農村の課題
1 公民教育の意義
2 小農保護の着想
3 地方青年の進路
第二節 団体的自我の形成
1 青年団改編の論理
2 青年団における公徳心の修養

結章 道義的共同体論の帰結

補論 模範村自治の源流――杉山報徳社の社会的紐帯

国家の比較歴史社会学の試み――あとがきにかえて

一木喜徳郎略年譜
史料・参考文献表
事項索引
人名索引



【書評・紹介】
●『図書新聞』(2016年5月7日号)、評者:宮平真弥氏・流通経済大学教授
「一木法思想の「現代的意義」を、中間団体構想に読み取る」
●『日本歴史』(2017年5月号)、評者:播磨崇晃氏