〈2016年度ドイツ学会奨励賞受賞〉
 
 

 黒いヨーロッパ――ドイツにおけるキリスト教保守派の「西洋(アーベントラント)」主義、1925~1965年 

板橋拓己 著
ISBN:978-4-905497-44-8、四六判上製、261頁、本体価格2,300円、2016年刊

「西洋」と訳されてきたドイツ語Abendland。英語のOccidentに対応する語である…。
この「アーベントラント」がもつ政治的な意味は何か。そして、「アーベントラント運動」がいかなるヨーロッパ像を描き、現実の西ドイツのヨーロッパ政策と切り結んでいたかを、戦間期まで遡りながら丹念に描く。


【著者】板橋拓己(いたばし・たくみ)
成蹊大学法学部教授。1978年栃木県生まれ。2001年北海道大学法学部卒業、08年北海道大学大学院法学研究科博士後期課程修了。博士(法学)。専攻は国際政治史、ヨーロッパ政治史。
主な著書に『中欧の模索――ドイツ・ナショナリズムの一系譜』(創文社、2010年)、『アデナウアー――現代ドイツを創った政治家』(中公新書、2014年)、『複数のヨーロッパ――欧州統合史のフロンティア』(共編著、北海道大学出版会、2011年)、『ヨーロッパ統合史』〔増補版〕(共著、名古屋大学出版会、2014年)、『現代ドイツ政治』(共著、ミネルヴァ書房、2014年)、訳書に、アンネッテ・ヴァインケ著『ニュルンベルク裁判――ナチ・ドイツはどのように裁かれたのか』(中公新書、2015年)など。

【目次】
 序 章
 第1節 ヨーロッパ統合と近代
 第2節 「西洋(アーベントラント)」とは何か
 第3節 「暗いヨーロッパ」―ヨーロッパ統合史の「暗い遺産」をめぐって
 第4節 「黒いヨーロッパ」―キリスト教民主主義・保守主義勢力とヨーロッパ統合
 第5節 先行研究と本書の位置づけ
 第6節 本書の構成と射程
第1章 キリスト教民主主義の国際ネットワークとヨーロッパ統合
 第1節 1945年以前の国際協調の模索
 第2節 NEIとジュネーブ・サークル―ヨーロッパの平和と反共と統合のために
 第3節 ジュネーブ・サークルとアデナウアー外交―「西側結合」の貫徹
 第4節 キリスト教民主主義の「ヨーロッパ」―「西洋」へのドイツの再統合
第2章 第一次世界大戦後の「西洋」概念の政治化
―雑誌『アーベントラント』とヘルマン・プラッツを中心に
 第1節 雑誌『アーベントラント』(1925-1930年)
 第2節 ヘルマン・プラッツの「アーベントラント」思想
第3章 「アーベントラント」とナチズム
 第1節 反ヴァイマル共和国派による「アーベントラント」概念の拒否
 第2節 ナチ体制下の「アーベントラント」概念
 第3節 「抵抗」の証としての「アーベントラント」?
第4章 第二次世界大戦後のアーベントラント運動
 第1節 第二次世界大戦後の再出発―雑誌『ノイエス・アーベントラント』
 第2節 アーベントラント運動の組織化
 第3節 アーベントラント主義者の世界像
 第4節 アデナウアーとアーベントラント運動
 第5節 アーベントラント運動の衰退
 第6節 アーベントラントの再生?
おわりに

あとがき

史料・参考文献一覧
人名索引
事項索引



【書評・紹介】
〈2016年度ドイツ学会奨励賞受賞〉
●『日本経済新聞』(2016年12月24日)文化面
●『日本経済新聞』(2016年10月9月)
●『中央公論』(2016年11月号)
“本書の斬新さは、ヨーロッパ統合の歴史を「近代」」と「反近代」という切り口から論じた点にある。(中略)・・・本書を読めば、ヨーロッパ統合史を見る視点が変わるであろう。それだけのインパクトがある。”(宮下雄一郎氏・松山大学准教授)
●『歴史学研究』(2018年2月)
●『外交』(2017年1月)