GRIHL(グリール) 文学の使い方をめぐる日仏の対話

文芸事象の歴史研究会編
野呂康/中畑寛之/嶋中博章/杉浦順子/辻川慶子/森本淳生 編
ISBN:978-4-905497-48-6、A5判上製、396頁、本体価格6,000円、2017年刊

文学と歴史記述をめぐる討論の集大成!
歴史が書かれるものである以上、歴史記述と文学を隔てるものはない。
歴史家は文学を参照・借用しつつ 歴史を記述する。虚構とみなされる文学も、それ自体時代の証言となる……

本書で展開されるのは、文学の使用と歴史記述に関する方法を長年検討してきたフランスの研究集団「GRIHL」と、時とテーマごとに構成メンバーをかえて活動している我が国の「文芸事象の歴史研究会」による共同研究の成果である。本書は単なる翻訳論集でも、最新の研究紹介でもない。GRIHLの研究を批判的にとらえながら各人の研究を深化させていった、我が国の若手研究者の軌跡である。


【編者・執筆者・訳者】
野呂 康(岡山大学全学教育・学生支援機構准教授)
ジュディト・リオン−カン(社会科学高等研究院(EHESS)准教授)
中畑 寛之(神戸大学大学院人文学研究科准教授)
小溝 佳代子(青山学院大学非常勤講師)
ダイナ・リバール(社会科学高等研究院(EHESS)研究指導官)
ニコラ・シャピラ(パリ西・ナンテール・ラ・デファンス大学教授)
嶋中 博章(関西大学文学部助教)
クリスチアン・ジュオー(社会科学高等研究院(EHESS)研究指導官)
望月 ゆか(武蔵大学人文学部教授)
杉浦 順子(広島修道大学商学部教授)
森本 淳生(京都大学人文科学研究所准教授)
辻川 慶子(白百合女子大学文学部准教授)
桑瀬 章二郎(立教大学文学部教授)

【目次】
序章 文学の効用――文芸事象の歴史研究序説 (野呂 康)

第Ⅰ部 文学の使用法 GRIHL論文選
1 フランス一九世紀前半の読書経験と社会経験
――歴史家による文学の使用法を再考する   (ジュディト・リオン‐カン/野呂康訳)
2 文学史と読書の歴史   (ジュディト・リオン‐カン/中畑寛之訳)
3 「時の故郷(くに)へ」 ジュール・バルベ・ドールヴィイ   (ジュディット・リヨン‐カン/小溝佳代子訳)
4 経験という仕事
――近世における哲学者の伝記、哲学的生のスタイル、人間の生   (ダイナ・リバール/野呂康訳)
5 書物の中の世界、世界の中の書物 パラテクストを超えて
―― 一七世紀における書籍商の出版允許について   (ニコラ・シャピラ/野呂康訳)
6 ある国務秘書官のさまざまな歴史
――機密顧問会議の作家ロメニ・ド・ブリエンヌ(一六三六-九八)   (二コラ・シャピラ/嶋中博章訳)

第Ⅱ部 文学と証言
1 一七世紀における悲惨のエクリチュール――文学と証言   (クリスチアン・ジュオー/野呂康訳)
2 ボシュエ『ルーヴルの四旬節説教』をめぐる解釈の相克   (望月ゆか)
3 「バロック」概念をめぐって   (クリスチアン・ジュオー/野呂康訳)

第Ⅲ部 「書物の歴史」から「書物による歴史」へ
序 ――世界は書物によって織りなされてゆく  (中畑寛之)
1 書物による歴史
――方法論の提案   (ダイナ・リバール、二コラ・シャピラ/中畑寛之訳)
2 シャルル・ド・グリマルディの『メモワール』
――フロンドの証言から家門の記念碑へ  (嶋中博章)
3 文学の真実
――社会的想像物、読書体験、文学的知   ( ジュディト・リオン-カン/杉浦順子訳)
4 <詩の危機>は起こらないだろう
――一九世紀末「文芸共和国」史    (中畑寛之)

第Ⅳ部 文学・証言・生表象
序――文学研究と歴史記述研究の対話のために    (森本淳生)
1 農村における政治と文学
――レチフ・ド・ラ・ブルトンヌ  ( ダイナ・リバール、ニコラ・シャピラ/辻川慶子訳)
2 レチフ
――啓蒙の「マイナー文学」再考のために   (桑瀬章二郎)
3 『フランス組曲』
――レチフからネミロフスキへ、農村におけるフランス   (ジュディト・リオン-カン、クリスチアン・ジュオー/辻川慶子訳)

あとがき――ある情熱の証言として (中畑寛之)

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