冷戦変容期イギリスの核政策――大西洋核戦力構想におけるウィルソン政権の相克
小川健一 著
ISBN:978-4-905497-51-6、A5判上製、237頁、本体価格:3,600円、2017年刊
1964年秋の総選挙で勝利したイギリス労働党ウィルソン政権は、大西洋核戦力(ANF)構想を提案する――。
イギリスの核戦力を「国際化」することを主眼としたANF構想の起源や立案・決定過程をつぶさに観察しながら、ウィルソン政権が直面していた外交・防衛政策の課題をも浮かび上がらせる一冊。
【著者】小川健一(おがわ・けんいち)
1969年兵庫県神戸市生まれ。防衛大学校国際関係学科卒業後、陸上自衛隊入隊。筑波大学大学院地域研究研究科修士課程修了、防衛大学校総合安全保障研究科前期課程修了、防衛大学校総合安全保障研究科後期課程修了。博士(安全保障)。
専攻は、ヨーロッパ安全保障、ヨーロッパ国際政治史。
「「自立」をめぐるウィルソン政権内の相克――大西洋核戦力(ANF)構想の立案・決定過程の解明」(『国際政治』第174号、2013年 9月)、「OEFとISAFの指揮関係――有志連合と同盟の「共働(synergy)」」(『防衛学研究』第38号、2008年3月)、「戦略文化と政策決定――コソヴォ紛争におけるNATOの武力行使を事例に」(『戦略文化』第4号、2006年12月)、「[解説] ドイツ連邦軍と安全保障政策――冷戦期と冷戦終焉後の変化」(クラウス・ナウマン著/日本クラウゼヴィッツ学会訳『平和はまだ達成されていない』芙蓉書房出版、2009年)。
【目次】
序 章
第1章 アメリカに依存した「自立」の確立―1940年4月~1962年10月
第1節 核兵器の独自開発
第2節 運搬手段のアメリカへの依存と「自立」の追求
第3節 1960年代初頭の核戦力の運用計画
第2章 保守党政権の「自立」を巡る混迷―1962年11月~1964年6月
第1節 ナッソー協定と「自立」の維持
第2節 NATO核戦力をめぐるアメリカ政府との軋轢
第3節 MLFへの参加をめぐる外務省と国防省の軋轢
第3章 野党労働党の「自立」への反発―1951年10月~1964年10月
第1節 1960年代初頭までの労働党の核政策
第2節 ウィルソン労働党の核政策
第3節 総選挙における「自立」をめぐる論戦
第4章 外務省と国防省の「自立」を巡る対立―1964年7月~10月
第1節 核政策に関する新政権への提言文書の作成
第2節 文書の統合と「自立」放棄への傾斜
第3節 国防省の「自立」喪失への危機感
第5章 ANF構想の立案と「自立」を巡る攻防―1964年10月~11月
第1節 ウィルソン首相の政治指針とアメリカ政府への事前説明
第2節 政府内で検討されていた代替構想
第3節 草案作業部会による核戦力の提供方法の検討
第4節 国防省の「自立」を維持するための働きかけ
第6章 ANF構想の決定と「自立」の決着―1964年11月~12月
第1節 MISC16での「自立」に関する方針決定と代償の模索
第2節 チュッカーズ会合におけるANF構想の決定
第3節 ANF構想の実現に向けての模索と断念
第4節 スエズ以東での核抑止力の「国際化」の模索
終 章
おわりに
参考文献リスト
関連年表
人名索引
事項索引
【書評・紹介】
●『史學雑誌』(第128編 第7号・2019年7月)、評者:小川浩之氏