対話 沖縄の戦後――政治・歴史・思考
河野康子/平良好利 著
ISBN:978-4-905497-54-7、四六判上製、297頁、本体価格2,400円、2017年刊
7名の“証言者”(儀間文彰、仲本安一、比嘉幹郎、照屋義実、鳥山淳、黒柳保則、我部政男)と政治学・行政学の第一人者(河野康子、天川晃、雨宮昭一、村松岐夫、荒木田岳、福永文夫、村井良太、平良好利)との濃密な対話の記録!
戦後沖縄とは何だったのか、沖縄と本土の関係はどうだったのか。
第Ⅰ部には、「保守」ないし「中道」といわれるようなポジションに立つ人々が登場!これまで光があてられてこなかった側面が垣間見える貴重な証言。
第Ⅱ部では、戦後沖縄を研究する三名の学者と研究会メンバーが「真剣勝負」。
解題――沖縄の戦後をどう考えるか (平良好利)
第Ⅰ部 証言者との対話――沖縄「保守」とはなにか
第1章 儀間文彰氏に聞く――アメリカ統治時代の政治と経済
終戦直後の沖縄経済/基地依存型輸入経済の形成/基地建設と軍工事ブーム/
サルベージとスクラップ輸出/B円からドルへ/講和条約締結後、本土から沖縄に戻る/
立法院議員選挙に出馬/実力者・兼次佐一との対決/沖縄選挙における白と黒/
「土建業界の両雄」、國場幸太郎と大城鎌吉/島ぐるみ闘争秘話/琉球政府厚生局長として/
沖縄における公衆衛生看護婦制度/稲嶺一郎について
第2章 仲本安一氏に聞く――沖縄社会大衆党と戦後政治
沖縄戦から米軍占領へ/政党の結成と日本復帰問題/沖縄県祖国復帰協議会の結成/
キャラウェイ高等弁務官について/松岡政保について/保守と革新について/
沖縄は第二のハワイになるなかれ/「琉球特別自治州」構想/社会大衆党の存在価値/
日本復帰と社会大衆党/民族政党としての社会大衆党/山中貞則、小渕恵三について/
社会大衆党と選挙/沖縄自立の課題と展望
第3章 比嘉幹郎氏に聞く――西銘保守県政と沖縄政治
米国留学から土地収用委員会の通訳へ/アメリカ総領事館の顧問として/
琉球大学教授から政治の世界へ/沖縄の保守と「オール沖縄」/西銘県政の基地への対応/
西銘県政の課題/沖縄自治州構想と自立的発展/西銘順治と社会大衆党/佐藤政権への評価/
沖縄のエリートについて/ウチナーンチュ意識/アジアとの交流
第4章 照屋義実氏に聞く――沖縄の建設業界と商工会
福島での学生生活と沖縄問題/沖縄に戻り、父の会社へ/商工会活動と政治との関わり/
建設業界と談合問題/二〇一〇年の沖縄県知事選挙と建設業界/
二〇一四年の沖縄県知事選挙と経済界/沖縄県政策参与に就任/
全国商工会青年部連合会会長として/商工会と補助金/建設業界の過去と現在/
オール沖縄の奔流
第Ⅱ部 研究者との対話――戦後沖縄研究の諸相
第5章 沖縄現代史研究をめぐって――その射程と課題【鳥山 淳】
「破たんする現実主義」という視点/今後の四つのテーマ/
沖縄における「戦後」をどう考えるか/沖縄にとっての近代経験とその終焉/
沖縄にとっての「戦後体制」とは/現実主義をめぐって/戦後初期の社会構造/
戦前・戦後の連続性と非連続性/朝鮮戦争と沖縄社会/「まだ見ぬもの」への期待/
ナショナリズムをめぐって/「島ぐるみ」をめぐって/沖縄における地域間関係について/
「民主化」と「自治」
第6章 いわゆる「周辺」の視点から
――米軍政下の大東諸島における「自治」【黒柳保則】
「琉球弧」のなかの大東諸島/大島諸島への調査団の派遣と「自治」制度の施行/
大東諸島における「自治」の問題/大東諸島の資源と政治行政/燐鉱と大東諸島の政治行政/
大東諸島における「自治」の内容や位置づけ/選挙権と自治制度/
製糖会社と地域社会の構造/文化運動と移住/
キャラウェイ高等弁務官による土地所有権認定とその背景
自治制度の施行と地域/政党や社会運動の存在、群島間の関係性/
四群島に分離された理由と、この地域についての研究の問題点/
第7章 戦後日本の沖縄像〈認識〉
――矢内原忠雄、中野好夫、大江健三郎を例に 【我部政男】
矢内原忠雄の沖縄訪問/「軍事植民地」としての沖縄/沖縄の精神的な復興/
イスラエルと民族意識/中野好夫の沖縄との関わり/
大江健三郎と渡嘉敷島の集団自決問題/戦時の支配秩序から考える集団自決問題/
三名に共通する「使命感」/「合図」によって作動する集団自決構造/
戦後民主主義と沖縄/本土と沖縄の占領/沖縄の知的リーダーについて/
沖縄の基地問題をどう考えるか/
おわりに(河野康子)
主要人名索引
●7名の証言者の横顔●
儀間文彰(ぎま・ぶんしょう) アメリカ統治時代を内側から知る最後の「生き証人」が存分に語る!
1922年生。56年の第三回立法院議員選挙で当選し、立法院議員を一期務める。その後、琉球倉庫公社専務理事、沖縄県経営者協会専務理事、沖縄テレビ放送株式会社常務取締役、沖縄製粉株式会社常務取締役などを経て、67年に琉球政府厚生局長に就任。
仲本安一(なかもと・あいち) 沖縄社会大衆党第7代委員長も務めた人物が「保守」「革新」を語る!
1935年生。日本大学法学部卒業。帰郷後は沖縄県青年団協議会副会長、那覇市職員労働組合執行委員長、自治労沖縄県本部執行委員長等を歴任。60年の沖縄県祖国復帰協議会の結成にも参画。
比嘉幹郎(ひが・みきお) 西銘保守県政時代の副知事が西銘時代を大いに語る!
1931年生。米国カリフォルニア大学(バークレー校)卒業。同大学院で政治学の博士号(Ph.D.)取得。琉球列島米国土地収用委員会通訳、在那覇米国総領事顧問などを経て、琉球大学教授となる。その後、西銘順治に請われて副知事に就任(79~84)。
照屋義実(てるや・よしみ) 沖縄経済界の中心人物が建設業界と政治の関係を生々しく語る!
1947年生。福島大学経済学部卒。74年に父が創業した照正組に入社。91年に照正組代表取締役社長。県商工会青年部連合会会長、全国商工会青年部連合会会長等を経て、建設業協会会長(2010~12)、県商工会連合会会長(2012~16)などを歴任。2016年には沖縄県政策参与に就任。 本年2月には副知事への就任を要請されるも固辞。
鳥山淳(とりやま・あつし)
1971年生。沖縄国際大学総合文化学部教授。専門は沖縄現代史。著書に『沖縄/基地社会の起源と相克 一九四五-五六』(勁草書房)、『イモとハダシ――占領と現在』(社会評論社、編著)、『「島ぐるみ闘争」はどう準備されたか』(不二出版、編著)など
黒柳保則(くろやなぎ・やすのり)
1971年生。沖縄国際大学法学部准教授。専門は地方自治論、地域政治史。著書・論文に「日本復帰と二つの『議会』」『沖縄法学』、「琉球政府と沖縄県」『自治体改革の今――沖縄の事例を中心として』(編集工房東洋企画)、「立法院発足前の宮古群島」『沖縄県議会史 第二巻 通史編二』など。
我部政男(がべ・まさお)
1940年生。山梨学院大学名誉教授。専門は近代日本政治史。著書に『明治国家と沖縄』(三一書房)、『近代日本と沖縄』(三一書房)、『沖縄史料学の方法』(新泉社)、『蝦夷地と琉球』(吉川弘文館、編著)など。
【書評・紹介】
●『毎日新聞』沖縄論壇時評(2017年7月29日)
●『沖縄タイムス』(2017年9月2日)
●『公明新聞』(2017年9月18日)
●『沖縄文化研究所報』(2018年8月31日)