フランス政治危機の100年――パリ・コミューンから1968年5月まで

ミシェル・ヴィノック 著 大嶋厚 訳
ISBN:978-4-905497-66-0、四六判上製、600頁、本体価格4,500円、2018年刊

1871年のパリ・コミューンから、1968年の「五月革命」にいたる、100年間に起こったフランスの体制を揺るがした8つの重要な政治危機を取り上げ、それらの間に底流として流れる共通点と、それぞれの間にある断絶を明らかにしようとする。


【著者】ミシェル・ヴィノック(Michel Winock)
1937年パリ生。歴史家。専門は近・現代フランス政治史、政治思想史。フランスにおけるナショナリズム、反ユダヤ主義、知識人の政治参加の代表的研究者の一人。ソルボンヌ大学卒、高等教員資格(アグレガシオン)取得。高校教員、パリ・ヴァンセンヌ大学助教授を経てパリ政治学院教授を務め、現在は名誉教授。
多くの著作があるが、邦訳されているものに、『ナショナリズム・反ユダヤ主義・ファシズム』(川上勉・中谷猛監訳、藤原書店)、『知識人の時代――バレス/ジッド/サルトル』(塚原史・立花英裕・築山和也・久保昭博訳、紀伊國屋書店)、『フランスの肖像――歴史・政治・思想』、『ミッテラン』(ともに、大嶋厚訳、吉田書店)など。
【訳者】大嶋厚(おおしま・あつし)
1955年東京生まれ。上智大学大学院博士前期課程修了。国際交流基金に勤務し、在ベルギー日本大使館文化担当官などを務めた後、パリ日本文化会館設立に携わる。その後、国際交流基金海外事務所課長、パリ日本文化会館副館長などを務めた。訳書に、M・ヴィノックの『フランスの肖像――歴史・政治・思想』『ミッテラン』(ともに吉田書店)のほか、V・デュクレール著『ジャン・ジョレス 1859-1914――正義と平和を求めたフランスの社会主義者』(吉田書店)、ジャン=ルイ・ドナディウー著『黒いナポレオン――ハイチ独立の英雄トゥサン・ルヴェルチュールの生涯』(えにし書房)などがある。

【目次】
第1章 パリ・コミューン
三月一八日 / 非妥協的態度の結果 / コミューン、それは何のためか / 三者による衝突 / 内戦の流儀 / その後
 
第2章 一八七七年五月一六日
不可能な王政復古 / 妥協の産物としての共和国 / 五月一六日 / 左派連合の勝利 / 五月一六日の中心課題
 
第3章 ブーランジスム
ジュール・フェリーの共和国 / 経済の不振 / ナショナリズムの危機 / 繰り返される病 / 陸軍大臣ブーランジェ / ブーランジェ派 / 運動の最盛期 /ブーランジスムをどう捉えるか / 共和国の強化
 
第4章 ドレフュス事件
「軍による不公正な行ない」(クレマンソー) / 世論をめぐる問題 / 知識人の登場 / ナショナリズムの脅威 / 共和国防衛と共和国の勝利 / 事件の後に
 
第5章 一九三四年二月六日
機能不全に陥った制度 / 急進派共和国の終焉 / 製粉機のような議会 / スタヴィスキーからシアップへ / 流血の現場 / その直後
 
第6章 一九四〇年七月一〇日
人民戦線の失敗 / ダラディエの共和国(一九三八年四月~一九四〇年三月) / ポール・レイノーの失敗(一九四〇年三月二二日~一九四〇年六月一六日) / 休戦協定 / 救世主的人物 / 共和国の最後
 
第7章 一九五八年五月一三日
「出口のない馬鹿げた戦争」(ギィ・モレ) / 統治不能な共和国 / 軍の介入 / 共和国防衛の困難 / 軍による「反政府宣言」の難しさ / 救世主的人物の再登場 / 偶発事と決定論 / 新しい共和国
 
第8章 一九六八年五月
いくつもの予兆 / ナンテールからバリケードへ / 九〇〇万人のスト参加者 / 政治危機 / 文化的変容 / 解釈をめぐる論争  
 / 一九六八年五月の残した影響
 
第9章 政治危機をめぐって
頻度 / 類型化の試み / 階級闘争 / 「危機計測器」 / 民の声と救世主の声 / 致命的な危機と、適応の危機 / フランスは恒常的内戦状態にあるのか
 
付録  一九四七年――恐るべき年
ルノー工場のストライキ入り / 「小波乱」でしかなかった共産党の下野 / 自然発生的な、浄化を求める怒りによる行動 / 共和国防衛の措置
 



【書評・紹介】
●『週刊読書人』(2019年2月1日号)、評者:中山洋平氏・東京大学教授
●『東洋経済』(2019年2月16日号)、評者:渡邊啓貴氏・東京外国語大学大学院教授