元防衛事務次官 秋山昌廣回顧録――冷戦後の安全保障と防衛交流

秋山昌廣 著 真田尚剛/服部龍二/小林義之 編
ISBN:978-4-905497-69-1、四六判上製、350頁、本体価格3,200円、2018年刊

日米同盟、普天間基地問題、尖閣諸島、北朝鮮、新防衛大綱、PKO、阪神・淡路大震災、オウム真理教事件、情報本部設置……
激動の90年代、当事者の貴重な証言


【著者】秋山昌廣(あきやま・まさひろ)

1940 年生まれ。東京大学法学部卒業。1964 年、大蔵省入省。主計局主計官、関税局総務課長、東京税関長、大臣官房審議官(銀行局担当)を経て、防衛庁に移り、長官官房防衛審議官、人事局長、経理局長、防衛局長、防衛事務次官などを歴任。1998 年退官後、ハーバード大学客員研究員、海洋政策研究財団会長、東京財団理事長を経て、安全保障外交政策研究会代表。
主な著作に、『日米の戦略対話が始まった─安保再定義の舞台裏』(亜紀書房、2002 年)、『日本をめぐる安全保障 これから10年のパワー・シフト─その戦略環境を探る』(共編著、亜紀書房、2004 年)、『アジア太平洋の未来図』(共編著、中央経済社、2017 年)。
 【編者】
真田尚剛(さなだ・なおたか)
1983 年生まれ。立教大学大学院21 世紀社会デザイン研究科博士後期課程修了、博士(社会デザイン学)。立教大学大学院兼任講師
主な業績に、「防衛官僚・久保卓也の安全保障構想─その先見性と背景」(河野康子・渡邉昭夫編『安全保障政策と戦後日本 1972 ~ 1994 ─記憶と記録の中の日米安保』千倉書房、2016 年)、「『防衛計画の大綱』における基盤的防衛力構想の採用 1974 ~ 1976 年─防衛課の『常備すべき防衛力』構想を巡る攻防」(『国際政治』第188 号、2017 年)
 
▶服部龍二(はっとり・りゅうじ)
1968 年生まれ。神戸大学大学院法学研究科博士後期課程単位取得退学、博士(政治学)。中央大学総合政策学部教授
主な業績に、『佐藤栄作─最長不倒政権への道』(朝日新聞出版、2017 年)、『高坂正堯─戦後日本と現実主義』(中公新書、2018 年)
 
小林義之(こばやし・よしゆき)
1978 年生まれ。早稲田大学大学院社会科学研究科博士課程満期退学、修士(学術)。公益財団法人笹川平和財団日中友好交流事業グループ主任研究員
主な業績に、「日中佐官級交流」(秋山昌廣・朱鋒編『日中安全保障・防衛交流の歴史・現状・展望』亜紀書房、2011 年)、『ナゾの国 おどろきの国 でも気になる国 日本─中国人ブロガー22人の「ありのまま」体験記』(共編、日本僑報社、2017 年)


【目次】
第1章 大蔵省から防衛庁へ――防衛審議官、人事局長
 
大蔵省から防衛庁へ/防衛審議官として/FSX問題/安全保障の環境変化と防衛庁/海部内閣から宮澤内閣へ/人事局長の役割/「クーデター論文」問題/日中関係の分析/クリントン大統領の登場/中期防衛力整備計画の見直し/北朝鮮の核・ミサイル開発/UNTACとPKO/女性自衛官のキャリアアップ
  
第2章 細川・村山政権の安全保障政策――防衛庁経理局長
 
防衛庁経理局長への就任/政権交代による安全保障政策への影響/樋口懇談会と「防衛力の在り方検討会議」/樋口レポートと村山首相/TMD構想と若泉敬の「密約」暴露/村山内閣発足と安全保障政策/加藤紘一政調会長の軍縮論/防衛交流と外国旅費/阪神・淡路大震災/村山富市内閣の退陣へ/オウム真理教──地下鉄サリン事件から観察処分へ/自衛隊海外派遣と防衛予算
  
第3章 橋本政権の安全保障政策――防衛庁防衛局長(1)
 
防衛局長就任/「大量破壊兵器の拡散問題について」の報告書/日米間の「密約」問題/非核三原則、「核の傘」、NBC兵器/台湾海峡危機/海上自衛隊艦艇のロシア・韓国訪問/モンデール駐日大使による尖閣諸島発言/台湾と香港の活動家による尖閣諸島不法上陸/韓国での江陵浸透事件/ペルー大使公邸人質事件/防衛庁情報本部の新設/防衛庁での組織改編/中国との防衛交流
 
第4章 普天間基地移設・日米安保共同宣言・日米ガイドライン――防衛庁防衛局長(2)
 
沖縄三事案/一九九五年の沖縄少女暴行事件/大田沖縄県知事の代理署名拒否/村山首相らの役割/SACO設置の経緯/サンタモニカでの日米首脳会談/普天間移設決定までの経緯/移設反対派の大田知事と移設賛成派の保守市政/米軍基地の整理と橋本総理の決断/一九九六年四月の日米安全保障共同宣言/日米ガイドラインの見直し/日米ガイドライン見直しに対する諸外国の反応/第二次クリントン政権
  
第5章 新防衛大綱と中期防衛力整備計画――防衛庁防衛局長(3)
 
防衛大綱の見直し/新防衛大綱策定過程での議論/〇七大綱策定と米国/策定に対する消極的な意見/基盤的防衛力構想/防衛力の規模/基盤的防衛力構想の踏襲/旧防衛大綱のエキスパンド条項と新防衛大綱の「弾力性」/新防衛大綱での治安出動規定/「周辺事態対処」の挿入/新防衛大綱と中期防衛力計画
  
第6章 防衛庁改革と防衛交流――防衛事務次官
 
防衛事務次官就任/防衛庁の省昇格問題/韓国による竹島の接岸施設建設/対人地雷禁止条約への署名/統合幕僚会議の権限強化/事務調整訓令の廃止/一九九八年の日ロ防衛交流/小渕内閣の誕生/一九九八年八月のテポドン・ミサイル発射/情報収集衛星導入の経緯/防衛事務次官時代の日中防衛交流/防衛事務次官としての思い出/防衛庁在職中を振り返って/防衛庁在職中で特に印象に残っている人物
  
第7章 二一世紀の安全保障――海洋政策研究財団会長・東京財団理事長
 
ハーバード大学研究員/在ユーゴ中国大使館誤爆事件/台湾に関する「三つのNO政策」/一九九九年六月末の中国訪問/日本の情報収集能力/日米ガイドラインと台湾
シップ・アンド・オーシャン財団会長への就任/海洋基本法の制定/海洋政策研究財団での事業/笹川日中友好基金運営委員として/民間団体による日中防衛交流/東京財団理事長として/日本の民間財団やシンクタンクについて
  
解題(真田尚剛)
 防衛庁幹部名簿
秋山昌廣関連年譜
 関連資料
 「平成八年度以降に係る防衛計画の大綱」(一九九五年一一月二八日閣議決定)
 「日米防衛協力のための指針」(一九九七年九月二三日)
 防衛庁・自衛隊の組織図(一九九八年)
 人名索引



【書評・紹介】
●『公明新聞』(2019年3月18日)、評者:佐道明広氏・中京大学教授
●『外交』(2019年1・2月号)