地方分権化と不確実性――多重行政化した港湾整備事業

林昌宏 著
ISBN:978-4-905497-80ー6、A5判上製、、352頁、本体価格:4,400円、2020年刊

戦後日本における港湾整備事業を政治学・行政学の視点から精緻に分析


【著者】林 昌宏(はやし・まさひろ)
常葉大学法学部准教授。1980年 兵庫県生まれ。2010年 大阪市立大学大学院創造都市研究科博士後期課程修了。博士(創造都市)。
(独)日本学術振興会特別研究員(DC2、PD)、(公財)ひょうご震災記念21世紀研究機構研究調査本部主任研究員、常葉大学法学部講師(専任)などを経て、2018年より現職。


【目次】
序 章  なぜ港湾を分析対象とするのか
 第1節 事例分析の意義
 第2節 本書の構成
  
第1章 政治学的視点からの港湾整備事業へのアプローチ
    ――本書の課題と分析枠組み――
 はじめに――公共投資に関する先行研究の考察をもとに
 第1節 港湾整備事業に関する先行研究
 第2節 本書における主張と課題
 第3節 本書の分析枠組み
 おわりに
  
第2章 港湾法の制定による地方分権的な制度の確立
 はじめに
 第1節 明治期からアジア・太平洋戦争敗戦までの港湾管理・整備の特徴
 第2節 港湾法の制定
 第3節 戦後の港湾法制と港湾整備五カ年計画の変遷
 おわりに
  
第3章 港湾整備事業をめぐる地方-地方政府間関係
――フロントランナーとしての神戸港、大阪港の大規模化――
 はじめに
 第1節 港湾管理権の地方自治体への移管とその影響
 第2節 港湾の過密化と阪神ポートオーソリティ構想の検討
 第3節 神戸港と大阪港の大規模化の促進
 第4節 世界トップクラスの港湾への躍進
 おわりに
  
第4章 港湾の大規模化競争からの脱落と軌道修正
――尼崎西宮芦屋港の事業内容の見直しを中心に――
 はじめに
 第1節 石油化学コンビナート誘致構想の登場と挫折
 第2節 尼崎西宮芦屋港の整備開始
 第3節 港湾整備事業の頓挫とその要因
 第4節 港湾整備事業の見直しをめぐる官民の相克
 おわりに
 
 
第5章 港湾の大規模化による影響の波及
――姫路港、東播磨港と播磨工業地帯の開発を踏まえて――
 はじめに
 第1節 播磨工業地帯の開発過程
 第2節 播磨臨海部への企業の進出・立地と港湾の大規模化
 第3節 公共投資の累積・集中状況
 第4節 工業地帯と港湾の整備状況の連関性
 おわりに
  
第6章 港湾整備事業における中央-地方政府間関係
――外貿埠頭公団の設立と廃止を事例に――
 はじめに
 第1節 港湾法の見直しをめぐる中央-地方政府間の攻防
 第2節 外貿埠頭公団設立までの経緯
 第3節 外貿埠頭公団の設立とその実績
 第4節 外貿埠頭公団の廃止・解体――政治過程の優位性
 おわりに
 
 第7章 港湾整備事業をめぐる分権的政策決定
――名古屋、四日市両コンテナ埠頭株式会社の設立への途――
 はじめに
 第1節 名古屋港管理組合の設立と港湾の大規模化
 第2節 名古屋港でのコンテナ埠頭建設に向けた動き
――中央-地方政府間の対立と地方自治体による権限の行使
 第3節 名古屋コンテナ埠頭株式会社の設立実現
――中央-地方政府間対立と省庁間対立の交錯
 第4節 名古屋コンテナ埠頭株式会社設立の余波
――四日市コンテナ埠頭株式会社の設立
 おわりに
 
終 章 地方分権的な制度の確立と作動の果てに
第1節 得られた知見の要約と本書の含意
第2節 日本政治の理解への貢献――魔術的な用語としての「地方分権」
第3節 残された課題
 


【書評・紹介】
≪2021年度日本公共政策学会学会賞(奨励賞)≫
『公共政策研究』(第22号、2022年)、評者:小林大祐氏・東洋学園大学
●『年報行政研究』(第56号、2021年)、評者:北村亘氏・大阪大学大学院法学研究科教授
●『都市問題』(2020年9月号)、評者:山崎幹根氏・北海道大学
●『港湾』(2020年5月号)、評者:池田薫氏・日本港湾協会専務理事