松村謙三 三代回顧録 

松村謙三 著 武田知己 編
ISBN:978-4-905497-97-4、四六判上製、430頁、本体価格3,200円、2021年刊


戦後の混乱期から自民党創成期にかけて厚相、文相、農相などを務め、1959年には自民党総裁選にも立候補した保守政治家・松村謙三の自伝『三代回顧録』(東洋経済新報社、1964年)の復刊。
“党人派”の面目躍如


【著者】松村謙三(まつむら・けんぞう)
1883(明治16)年、富山県生まれ。
早稲田大学政治経済学科卒業後、報知新聞社入社。1917年に福光町会議員、1919年に県会議員となり、1928年に第16回衆議院議員総選挙(第1回普通選挙)で当選。戦前は立憲民政党に所属して衆議院選挙で連続6回当選。戦後は、戦後いったん公職追放になるものの、追放解除後に改進党から自由民主党に所属して衆議院選挙で連続7回当選、合計13回の当選を果たした。厚生大臣、農林大臣、文部大臣を歴任。1971年8月21日、88歳で逝去。
 
【編者】武田 知己(たけだ・ともき)
大東文化大学法学部教授。2000年東京都立大学大学院社会科学研究科博士課程中途退学、博士(政治学)
〔主要業績〕
『重光葵と戦後政治』(吉川弘文館、2002年)、『日本政党史』(共編、吉川弘文館、2011年)など。


【目 次】
第1章 生い立ち、早稲田遊学
 一 山本勘介の後えいに導かれる
 二 憲法誤記で切腹さわぎ
 三 竹槍持って投票に
 四 豪放な友人たち
 五 暑い寒い、とはなんだ……
 六 酒客博士論文を書かず
 七 安部先生の講義に感激
 八 〝赤スネ〟姿の早慶戦
 九 卒業半年前に渡支
 十 名優団十郎も参る――天下無比の太刀山
第2章 新聞記者時代
 一 毛布をかぶって取材――つかみ所のない若槻次官
 二 相場で千円もうける――三木社主の命令で経験
 三 名古屋銀行の取付け騒ぎ――二、三年まとめて勘定払う伊藤公
 四 北浜大火を通信――親戚に数奇伝の持ち主
 五 〝千里眼〟をスクープ――五十種類の科学実験
 六 噴火?の伊吹山に登れ――姉川流域の大地震
 七 頼母木氏、日本初の飛行機作る――箱根で「観楓画会」を開く
第3章 大隈侯の思い出
 一 大隈侯付きの記者に――婦人には温雅な態度
 二 居眠りして冠のひもを焼く――専門家を驚かした演説
 三 豪壮だった生活ぶり――朝吹英二が幕僚に
 四 〝楠公権助論〟の主張――福沢諭吉、大隈侯と提携
 五 怪物記者、飯野吉三郎――豪傑、田淵真面目を発揮
 六 国葬よりも国民葬で――母堂、蓮根の糸で織物
第4章 政界へ
 一 父と祖父をなくす――――閑を利用して植林
 二 二、三百票差で落選――東園知事、県営電気を実現
 三 ヒスイをばらまく――天津で成功した中野長作
 四 辻政信、酒豪大観に参る――天才画家、菊池左馬太郎
 五 ビールは酒でない、西能氏――選挙は体力の争い、上埜さん
 六 県議会で便所問答――盟友のため弁護に立つ
 七 平軍逆に源軍を破る――倶利伽羅峠の北陸大演習
 八 張作霖爆殺事件――田中内閣ついに総辞職
 九 鬼気人に迫る中野の演説――用意周到な永井氏
 十 浜口雄幸、半日で組閣――町田氏の秘書になる
第5章 浜口内閣から斎藤内閣まで
 一 町田農相の逸話
 二 十円で起請文買い取る
 三 仏像の魂を抜いてもらう
 四 河野一郎、減俸反対をあおる
 五 浜口首相悲壮な退院
 六 伴食大臣に偉材
 七 〝率勢米価〟で米穀法改正
 八 一発の凶弾、大器を斃す――総裁候補井上氏の遭難
 九 文相を棒に振った鳩山氏
 十 軍部初の政策干渉
第6章 動乱の時代、そして終戦
 一 守られた議会制度――平沼氏、翼賛体制に怒る
 二 百万円の選挙資金――西園寺公、反対の民政党へ用立て
 三 二・二六事件――若槻前首相、避難を拒む
 四 軍主張の戒厳令を一蹴――町田商相の気概に感嘆
 五 川崎氏の死に暗然――小川商工大臣、寺島参与官
 六 崑崙丸、一瞬真っ二つ――かえらぬ加藤、助川両氏
 七 悲鳴あげた二十四時間の対局――三好英之の〝脅迫初段〟
 八 大日本政治会を結成――総裁に南大将、幹事長松村
 九 世界へ終戦呼びかけ――戦局収拾を使命にした鈴木首相
 十 涙の中に〝聖断〟下る――阿南首相、大罪を謝し自刃
第7章 占領から復興時代へ
 一 東久邇宮内閣誕生――近衛公のたのみで厚相受諾
 二 進駐に殺気立つ厚木――高松宮、海軍を説得
 三 廃墟に規格住宅――芦田氏、労働対策に困惑
 四 幣原内閣の農相に就任――正力氏、河合次官を説得
 五 配給量わずか三日分――石原将軍、酵素肥料を無償提供
 六 陛下、大凶作をご心配――那須博士に協力要請
 七 皇室の御物を代償に――マ元帥、陛下の御心に感動
 八 畜産の統制を解除――山林経営に心血注ぐ
 九 総司令部から追放令――三土氏内相就任に条件
 十 陛下、伊勢にご参拝――堀切内相、治安維持に努力
第8章 追放、再び政界へ
 一 武蔵野でしいたけ栽培――郷里の山林を売りぐい
 二 子犬は売るものだ――〝幣松商会〟はお流れ
 三 憲法第一条で大論争――陛下、憲法改正へご決断
 四 煙と消えた三木金鉱――砂金の上に立つ町、金沢
 五 重光氏を改進党首に――吉田内閣打倒で遊説
第9章 先人、盟友をしのぶ
 一 苦節十年の加藤総裁――剛愎果敢の横田千之助
 二 病床で晩酌三合――強情不屈の伊沢多喜男
 三 若槻さんとわらじ酒――床次氏、突然の脱党騒ぎ
 四 〝来たり、見たり、敗れたり〟――永井氏、勝太郎を天下に宣伝
 五 最終バスに乗り遅れるな――ついに民政党を離党
 六 死児の横で原稿書き――町田氏『東洋経済』を創刊
 七 山口銀行の基盤をつくる――八十一歳で二時間の大演説
 八 町田氏の説得で決意――吉田氏、自由党総裁に
 九 私財投げだし政党作り――中島氏の〝原爆〟話に驚く
 十 財界で異彩の人物――池田成彬と小林一三の両氏

解説 (武田知己)
松村謙三略年譜
人名索引


 【書評・紹介】
『図書新聞』(2022年2月5日号)、評者:村上友章氏・流通科学大学准教授
●『公明新聞』(2021年11月1日)、評者:村井良太氏・駒澤大学教授
●『朝日新聞』(2021年8月15日)「日曜に想う」欄で取り上げられました。