戦後日本政策過程の原像――計画造船における政党と官僚制
若林 悠 著
ISBN:978-4-910590-06-6、四六判上製、320頁、本体価格:3,000円、2022年刊
1950年代とはいかなる時代だったのか。
政治と行政の緊張関係がもたらしたものは…
戦後日本の政官関係を再考する。
【著者】若林 悠(わかばやし ゆう)
大東文化大学法学部講師 博士(学術)。1986年千葉県生まれ。2011年慶應義塾大学総合政策学部卒業。2013年東北大学大学院法学研究科博士前期課程修了。2018年東京大学大学院工学系研究科先端学際工学専攻博士課程修了。東京大学先端科学技術研究センター特任助教を経て、2020年より現職。専攻は行政学。〔主要業績〕『日本気象行政史の研究――天気予報における官僚制と社会』(東京大学出版会、2019年)「オーラル・ヒストリーにおける「残し方」――課題と工夫の「共有」に向けて」(御厨貴編『オーラル・ヒストリーに何ができるか――作り方から使い方まで』岩波書店、2019年)
【目次】
序 章 戦後日本にとっての計画造船
第1章 計画造船にどうアプローチするか―本書の課題認識と視角
第一節 産業政策論の視角
(1) 「政府主導」の視角
(2) 「企業体・市場主導」の視角
(3) 「ネットワーク」の視角
(4) 産業政策論の理論的課題
第二節 本書の視角の設定
(1) 政策の継続と「評判」の構築
(2) 「非難回避」の視角
第三節 対象の性格と主要アクターの特徴
(1) 計画造船の見取り図
(2) 運輸省
(3) 海運業と造船業
(4) 大蔵省
(5) 政府系金融機関と民間金融機関
(6) 政党
第2章 占領期のなかの計画造船―政策の模索と手続的制度化
第一節 終戦直後の海運業
(1) 海運業の環境とGHQの初期の賠償方針
(2) 戦時補償の打ち切りと賠償緩和
第二節 計画造船の開始
(1) 復興金融金庫と船舶公団の設置
(2) 復金方式による計画造船の開始
第三節 占領政策の転換と計画造船の継続の模索
(1) 海運業を取り巻く環境変化と見返資金の導入
(2) 見返資金方式の開始と「議員・政党の介入」の幕開け
(3) 審議会の設置―「運動」への対応
(4) 見返資金方式の政策過程の特徴―計画造船の手続的制度化と「運動」の過熱化
小括
第3章 一九五〇年代の計画造船―政策の動揺と制度的定着
第一節 海運補助制度の実現と「議員・政党の介入」
(1) 日本開発銀行の設立と海事金融機関の構想
(2) 海運復興会社案の構想と利子補給制度の実現
(3) 三党修正案による利子補給制度改正と損失補償制度の成立
第二節 開銀方式による計画造船と造船疑獄
(1) 第九次計画造船の開始
(2) 造船疑獄のインパクト
(3) 造船疑獄による政策環境の変化
第三節 造船疑獄後の計画造船
(1) 第一〇次計画造船の難航と政治的解決
(2) 海運市況の好転と政権交代
(3) 第一二次計画造船と復配問題
(4) 第一三次計画造船と利子補給制度の停止
小括
第4章 高度経済成長期のなかの計画造船―制度的定着後の政治的再活性化
第一節 計画造船の質的変容
(1) 制度的定着後の第一四次計画造船
(2) 海運業の経営合理化という課題
(3) 利子補給制度の復活と「企業強化計画」
第二節 計画造船と海運集約
(1) 第一七次計画造船の難航と政治的解決
(2) 海運集約と「議員・政党の介入」
小括
終 章 計画造船における政党と官僚制
参考文献
あとがき
人名索引
事項索引
【書評・紹介】
●『年報行政研究』第59号(2024年)、評者:柳至氏(立命館大学准教授)
●『日本歴史』第912号(2024年5月号)、評者:若月剛史氏(関西大学教授)
●『公共政策研究』第23号(2023年)、評者:馬場健氏(新潟大学教授)