ルソーからの問い、ルソーへの問い――実存と補完のはざまで
熊谷英人 著
ISBN:978-4-910590-16-5、四六判上製、442頁、本体3,800円、2023年12月刊
政治の源流たる古代ギリシャ・ローマ、戦争と革命に彩られた西洋と日本の近代、そして『エヴァンゲリオン』――「ルソー的なるもの」をめぐる思想史論集
人類に真の「幸福」をもたらす秩序とは、いかなるものか。生涯を賭けてこの問いに挑んだ思想家、ジャン=ジャック・ルソーは、近現代の精神史に巨大な足跡を遺した。その射程は、現代日本のアニメーション文化にまで及んでいる。本書はルソーの思想の本質を解き明かしたうえで、ゲンツ、ニーブーア、トクヴィル、林達夫、福田歓一など、「ルソー的なるもの」に魅せられながらも対峙した知識人たちの軌跡をたどる。気鋭の思想史研究者による、知的刺激に満ちた論集。
【著者】熊谷 英人(くまがい・ひでと)
明治学院大学法学部准教授
1984年、東京都生まれ。東京大学法学部卒業後、東京大学大学院法学政治学研究科博士課程修了。博士(法学)。
専門は政治学史(西洋政治思想史)。
著書に、『フランス革命という鏡――十九世紀ドイツ歴史主義の時代』(白水社、2015年。サントリー学芸賞(思想・歴史部門)受賞)、『フィヒテ 「二十二世紀」の共和国』(岩波書店、2019年。日本フィヒテ協会賞(第二部門)、吉野作造研究賞(最優秀賞)受賞)、『戦後日本の学知と想像力――〈政治学を読み破った〉先に』(共著、吉田書店、2022年)など。
【目次】
序 章
第Ⅰ部 「ルソー的なるもの」をもとめて
第1章 「ルソー的なるもの」の現在――『新世紀エヴァンゲリオン』
はじめに
1 否定性の物語
2 「自分で考え、自分で決める」
3 「ルソー的なるもの」をめぐって
第2章 実存と補完――ジャン=ジャック・ルソー
はじめに
1 疎外
2 実存
3 補完
4 「名状しがたい空虚」
第Ⅱ部 ルソーとの対峙
第3章 均衡の宇宙――フリードリヒ・ゲンツ
はじめに
1 政体と均衡――ルソーとの対峙
2 歴史と均衡――革命に抗して
3 平和と均衡――「技術」としての「政治」
第4章 起源としてのローマ王政――B・G・ニーブーア
はじめに
1 方法と関心
2 ローマ王政論
3 「立法者」としてのセルウィウス
第Ⅲ部 ルソーが遺したもの
第5章 平等と専制
はじめに
1 古代ギリシア
2 一八世紀
3 一九世紀
4 二〇世紀
第6章 象徴と政治
はじめに
1 フランス革命と一九世紀
2 二〇世紀(1)――「象徴」の操縦
3 二〇世紀(2)――福田歓一とルソー
第7章 笑うエピキュリアン――林達夫
はじめに
1 「戦闘的無神論者」
2 「フォークロア」へ
3 「エピキュリアン」と「政治」の運命
終 章 歴史研究は何の役に立つのか――ルソーとトゥキュディデス
【書評・紹介】
●『図書新聞』(2024年6月1日号)、評者:関口佐紀氏(早稲田大学現代政治経済研究所特別研究所員)
●『読売新聞』(2024年3月10日)、評者:苅部直氏(東京大学教授)